抗酸化サプリメントを取り入れる

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精子DNAの断片化が起こるしくみと抗酸化の重要性

精子は精巣で作られ、精巣上体や精管などの精路を通って、射精まで待機します。その間に活性酸素にさらされますが、通常は抗酸化作用が働き、活性酸素種から守ってくれます。しかし、抗酸化力を上回るほど活性酸素種が増えると、酸化ストレスが発生します。これによりDNA断片化が引き起こされ、精子の質が低下してしまいます。

このことから、酸化ストレスやDNA断片化の低減には、抗酸化物質の摂取が有効であると考えられます。特に、DFI検査を行った結果、酸化ストレスやDNA断片化率が高く、精子の質の低下がART治療成績にマイナスの影響を及ぼしていることが疑われる場合は、抗酸化サプリメントの摂取が推奨されます。

サプリメントの摂取でART成績が向上する可能性

不妊治療を受けているカップルの男性パートナーへの抗酸化サプリメントの有効性を調査した研究があります。
それによると、61件のランダム化比較試験 (総被験者数6,264名)を対象としたシステマティックレビュー (*1)では、抗酸化サプリメントはパートナーの臨床妊娠率(a)、出産率(b)とも有意に向上させると報告されています。

(a) 男性参加者786名、オッズ比2.97、P<0.0001
(b)男性参加者 750名、オッズ比1.79, P=0.005

コエンザイムQ10+ビタミンC+ビタミンE

抗酸化サプリメントに使用されている抗酸化物質は多数存在します。そんな中で、ミトコンドリアの電子伝達系でエネルギー産生に深く関与する「コエンザイムQ10」は、経口摂取で精液中や精子細胞中のコエンザイムQ10濃度が上昇し、精子運動率を有意に改善させることがRCT(無作為比較対照試験)(*2)によって示されています。

そこで、還元型コエンザイムQ10(150mg)に、相互に協力して働くビタミンC (80mg)、ビタミンE(40mg)を加えた合剤を用いて、摂取前後のDNA断片化率を比較したところ、有意な低減が確かめられました。(*3)

文献
(1) Cochrane Database of Systematic Reviews 2019, Issue 3. Art. No.: CD007411.
(2)Fertil Steril, 2009; 91: 1785-1792
(*3)男性不妊症患者に対する高容量コエンザイムQ10療法と精子 DNA 断片化率検査(DNA Flagmentation Index:DFI) についての報告 第106回日本泌尿科学会

監修

獨協医科大学埼玉医療センター
獨協医科大学医学部特任教授

岡田 弘 先生