精子のことを知ろう
精子が作られるまで
精子は、陰嚢の中にある精巣で作られています。精子のもとになる細胞から精子の状態になるまでは74日間、精子が作られ始めてから射精するまでは約3カ月間かかります。
SIDE MEMO
精子が作られる機能になんらかの障害があると造成機能障害、射精された精液に精子が全く見あたらないと無精子症と診断されます。精巣で精子が作られていて移動ルートに問題がある場合は、精路通過障害による閉塞性無精子症となります。治療はTESE(精巣精子採取法)、MD-TESE(顕微鏡下精巣精子採取法)があります。
妊娠における精子の役割
一度の射精で数億個の精子が放出されますが、卵子までたどり着くことできるのは、ほんのひと握り。卵子と受精する精子は、ただ1つです。
自然妊娠の受精は、すべて体内で起こっているので自然のなりゆきです。一方、最先端の治療である顕微授精では、医療者が1つの精子を選んで卵子に注入します。
精子のDNA断片化は、受精3日目以降の受精卵(胚)の発育に深くかかわります。
精子の質がよくない場合、女性が若ければ卵子の力で精子の質の不足をカバーして胚は成長できます。しかし、女性が高年齢だとその力が弱く、流産になる確率が高くなります。
これまで流産の原因の多くは女性の卵子の質が問題と考えられていましたが、男性の精子DNA断片化の影響も考えられるのです。
「精子の質」と「精子DNA断片化」とは
精子の質を低下させる原因には、喫煙、加齢、病気(精巣などの感染)、肥満、ストレスなどがありますが、原因がわからないことも多いものです。
また、酸化ストレスは、精子頭部のDNAが損傷したり、精子体部や尾部の細胞膜の脂質や細胞質のタンパク質を酸化させたりすることがわかっています。
では、「精子の質」は、どう判断するのでしょうか?
これまでの精液検査の項目である精子の数や運動率などでは「精子の質」は判別できません。今後は「精子DNA断片化率」がひとつの指標になるでしょう。
精液検査について
通常の精液検査では、射精した精液中の精子の数や運動率、奇形率などを調べます。精液の一部を抜き取り、精子の状態を調べるための専用機器に移して検査し、結果を数値化します。これを精液所見といいます。
一般的には、精液所見を参考にして治療方針が決められます。
SIDE MEMO
検査の手順は、WHO(世界保健機関)のマニュアルに記載されていて、多くの医療施設はそれを参考に検査を実施しています。また、最新のWHOのマニュアルには「精子DNA断片化」についても記載されています。