妊娠のしくみと不妊治療
不妊とは
不妊とは、健康な男女が定期的に性交渉を重ねても、1年間妊娠しない状態をいいます。男性側に不妊の原因がある場合を男性不妊(症)といいます。
日本で不妊を心配した経験があるカップルは3組に1組、不妊の検査や治療を受けた経験のあるカップルは5.5組に1組とされます。(*1)
(*1)国立社会保障・人口問題研究所「第15回出生動向基本調査」より。
妊娠のしくみ
男性の1個の精子と女性の1個の卵子が、女性の体内で出会って受精し、細胞分裂を繰り返しながら卵管を移動し、子宮に着床すると妊娠が成立します。
妊娠するには、十分に成熟した卵子が排卵されること、その時期に元気な精子が十分な量、射精されることが必要です。卵子が受精できる能力を持っているのは、排卵から1日程度。精子は女性の体内で数日間は生きているものの、タイミングよく卵子までたどり着くことが必要です。
また、受精の場となる卵管が詰まっていないこと、着床する子宮内膜の状態がととのっていることも妊娠には重要なポイントです。
不妊検査・不妊治療
男女ともに検査を受け、妊娠を妨げている原因がないかどうか調べます。
女性の検査
妊娠に関係するホルモン検査、超音波検査、子宮卵管造影検査、フーナーテストなど。卵巣に卵子がどれくらい残っているかの目安になるAMH検査を行う場合もあります。
男性の検査
精液検査。泌尿器科での検査。
精子の状態は日によって違い、ストレスやプレッシャーの多い環境で採取するなど、精液の採取のしかたによっても精液検査の結果(精液所見)が変わることがあります。1回の結果だけで男性不妊と判断することは通常はありません。
検査の結果、治療が可能な場合には、その治療を行います。例えば、排卵障害と診断されれば排卵誘発剤による治療を行う、男性に精索静脈瘤が見つかったら手術で取り除くなどが考えられます。
不妊治療には、以下のような治療があります。
タイミング法
女性の排卵日に合わせて性交渉を持つこと。
体外受精
卵巣から取り出した卵子に、たくさんの精子を振りかけて、受精を待つ方法。卵管閉塞などのほか、タイミング法や人工授精を繰り返しても妊娠しない場合の治療です。
多くの場合、排卵誘発剤を投与して多数の卵子を成熟させてから採卵します。連日の排卵誘発剤の注射や通院など、女性の心身への負担が大きな治療といえます。
顕微授精
卵子の中に1個の精子を直接注入して授精させる方法。精子の数が極端に少ない男性不妊の場合に選択されます。
また、男性の精巣から精子を採取する治療を行う場合もあります。TESE(顕微鏡下精巣精子採取法)、MDTESE(顕微鏡下精巣精子採取法)など。
*体外受精や顕微授精などの高度な生殖補助医療を「ART」といいます。
日本でARTによって生まれた子どもは、2019年度は60,598人。累計で710,931人を数えます。同年の出生児全体の約14.3人に1人がARTによって生まれています。(*1)
(*1)ARTの出生児数は日本産科婦人科学会『日産婦誌』73巻9号より、出生数は厚生労働省「人口動態統計」より。