精子DNA断片化とART成績
両親の遺伝情報を伝える重要なDNA。
精子DNA断片化は体外受精の成績にも影響
父親の遺伝情報は、精子によって卵子の中へと運び込まれます。受精すると母親の卵子DNAと結合して、子どものDNAが形成されます。精子と卵子、両方とも健全であることが必要ですが、特に父親の精子DNAは受精3日目以降の胚(受精卵)の成長に関与すると考えられています。
精子DNAの断片化率が高いとART治療の成績が低下するという報告があります。これはARTに限らず、自然妊娠や人工授精も同じことがいえます。
精子DNAの断片化とは
精子DNAの断片化とは、精子DNAの二重らせん構造の鎖がちぎれてしまった状態で、精子のDNAが損傷していることを示します。その原因は、おもに酸化ストレスによるものと考えられています。
精子DNAが損傷した割合が「精子DNA断片化率」で、精子の質を表す指標のひとつです。
胚盤胞への発育を左右する重要な役割を果たす精子DNA
精子DNAの断片化は、受精3日目以降の胚の発育にマイナスの影響を及ぼすことが知られています。つまり、精子DNAは着床直前の状態の胚盤胞まで成長するかどうかに関わっているのです。
これは「Late Paternal Effect」と呼ばれ、胚盤胞への到達率や妊娠率の低下、流産率の上昇に関係すると考えられます
妊娠には「精子の質」が問われる時代。
精子DNAの断片化率を知り、対策を講じた治療を
原因不明の男性不妊と診断された男性に対して、酸化ストレスや精子の質を測定し、適切な対策を講じることで治療成績を改善できる可能性があります。また、原因不明のカップルにとっても、精子の質を高める可能性があります。
いずれにしても、これまでの精液検査ではわからない「精子の質」を調べることが、改善への第一歩につながります。不妊治療のどのステップにおいても、DFI検査により今後の対策を考えることは妊娠への近道といえるでしょう。